クリント・イーストウッド監督・主演の映画「運び屋」の感想です
原題は「Mule」で、スラングだと「麻薬の運び屋」の意味があります
<あらすじ>
2005年花の展覧会で優秀な園芸家のアール(クリント・イーストウッド)は
展覧会の参加者から大変な好評を受けている
が、その日は娘の結婚式で参加をすっぽかす
12年後の2017年、ネット販売の時代の流れに乗り遅れて
園芸家は廃業、家も差し押さえられてしまう
孫娘の結婚式で自身の窮状を見抜かれて
一人の男が仕事を持ち掛ける
いかつい男たちのいる場所に案内され
「鞄の中身をみるな」と言われるがままに「運び屋」の
仕事をこなしていくが…
<感想(ネタバレあり)>
元ネタはNY誌の記事「90歳の運び屋」に着想を得た映画です
観終わるとこれは、高齢で死期を悟った
クリント・イーストウッドがプライベートで自分がした
事の謝罪とこれから生きて行く若者に向けての遺言の映画
として作ったんでしょう
劇中のセリフでデイリリーの花を
「たった一日だけ花が開くんだ、努力と時間が必要なんだ」
というアールのセリフがありますが、もちろん
これは人生はただ一度だけである事と、家族と愛を育む為に必要な要素を言っていて
後半でアールからすれば若者(アールを追っているDEA捜査官!)に
「家族の事は忘れるな」とアドバイスをします
「グラン・トリノ」が映画の中で散々残酷な
事をして来た(44マグナムで人をバンバン撃ち殺したり)けど
「暴力はよくない」と告げる贖罪の映画だとすればこの映画はプライベートで
自分の周りの人たちに犯した罪を謝罪する映画なんだと
花の展覧会で周囲から賞賛を受けているのは
俳優であり監督であるイーストウッド自身の
功績を象徴させている
ネット販売に押されて自身は廃業するのは
おそらくネット動画サイトの台頭を表現しているんだと
主人公アールのだめ夫、ダメ親父っぷりですが
これはおそらくクリント・イーストウッドの私生活
でのダメっぷりを重ねていますね
いち表現者としては非常に高く評価されていますが
とにかく私生活に問題を抱えた人物なんですよ
娘役のアイリスはイーストウッドの
実の娘(アリソン・イーストウッド)で
1984年の映画「タイトロープ」で共演していて
映画の中で娘に自分の首を絞めさせるとかいう
ちょっと異常な事をさせていますし…😅
劇中でアイリスがアールをすごく嫌っているのは
リアルでイーストウッドの事を嫌っていた時期が
あったので(たしか父親へのあてつけにいちどヌードになっている)
それを実の娘に演じさせるとか娘さん複雑な心境だったんじゃないでしょうか
何度か結婚と離婚を繰り返してますし
愛人で、自身の監督作に何度も出演させて共演もした
ソンドラ・ロックとは結局別れて訴訟沙汰になるまでもめたり
家族との確執の解消ですが、もう少し娘に焦点を絞ったり
もめたソンドラ・ロックを本人でなくてもなんらかの代役を
出演させて謝罪するべきではないのかなと思ったんですけど…🤔
「お前本当に反省してんのか?」と問い詰めたいんですが…
映画内の謝罪や遺言が正直しらじらしく見えてしまうのは
私の気のせいなのかなと、視聴後ちょっとモヤモヤしました
<見どころ>
・運び屋の仕事を最初請け負う時、ものすごいオンボロ車で
仕事をするんですけど「これは高齢のアール自身なんだ、
最後までこの車で仕事するんだ!」等と思っていたら
大金が手に入ったらすぐに新車に買い替え…(;^ω^)
・仕事をこなす度(回数表示有り)報酬が増えてレベルアップしていき
ボスからの信用を得ていく、その金で閉鎖されようとしてる退役軍人クラブを
助けるのに、孫娘の美容学校の学費は出していない様子(ここらへんがまんま
クリントイー・ストウッド本人っぽく感じて謝罪の誠意に疑問を持ってしまう)
・仕事を依頼する麻薬カルテルの構成員と仕事をこなす度に
なんか仲良くなっている、というかなんかアールに優しい
(まあその後ボスが殺されてボスが変わると待遇が厳しくなるのですが)
・世代的にはクリント・イーストウッドの声は山田康雄さんなんですけど
この映画では多田野曜平さんが務めています
高齢になったイーストウッド(この時88歳)の雰囲気にぴったりです👍