アメリカで実際に起こった詐欺事件を追ったドキュメンタリーです
<あらすじ>
事の起こりは1992年、マクドナルドで
警察官を名乗るものから電話があって
「警察官への協力行為」を強要し、女性店員に
「身体検査」を行うよう指示
それだけにとどまらず、異常な行為をするよう
電話越しに強要する
だが電話してきた奴は警察でもなんでもなく
全米各地のファーストフード店に同様の事をしていた
異常性犯罪者だった
警察は犯人を捕まえようと捜査に乗り出し
犯人は見つかる
そして裁判が始まるのだが…
<感想>
まずこのドキュメンタリー、イギリスのテレビみたいです
胸糞の悪い内容なので視聴する際は
心の健康が良い時に観る事をおすすめします
犯人は人の心理を巧みに操る怪物で
被害者となる人物を選別している
それは「小さな田舎町の若いファーストフード店員」で
まだ世慣れていない、年上や権威者(先生・教会・警官・親)
に従い安い人物を
「そんなの電話越しで分かる訳ないだろ」と
思うでしょうが、犯人は何度も練習を重ねたりして
電話の仕方を学習し、「当たり」を引くまで
電話をかけ続けているんです
そして警察官という「権威」を使って店員を誘導し
異常な行為(おぞましくてここでは書きません、ご自分で視聴して
確認してください)を強要します
これ本当に起こった事なの?って不思議に思いますが
これ現実なんです
では何故こんな異常な事が出来てしまったのか、謎を解く鍵が出て来ます
それは「ミルグラム実験」と呼ばれるもので
閉鎖的な状況で権威者の指示にどれくらいの人が
従うのかという内容で、被験者のうち65%が
権威者の指示に従って異常な行為を行う事が出来る
事が判明した
この実験は別名「アイヒマン実験」とも呼ばれていて
「上からの命令で」「役割に最適化」し
裏付けともなっています
犯人はその65%の「当たり」を引くまで全米各地の
ファーストフード店(マクドナルドやタコベル)に
電話をかけていたということ
そして事件の被害者が、ファーストフード店側にも
責任があるとして会社を相手取り訴訟を起こします
ここから話が大きくなるというか、単純な詐欺事件では
収まらない嫌な展開になります
会社側は弁護士を雇って被害者の訴えを退けようと
したり、賠償金額を支払わないような対応をする
実際に事件は起こっていて被害者も出ているのに
なんでこんな対応を?と訝しくなりますが
株式会社(コーポレーション)というものは
株主の利益を最大にするという「役割に最適化」する存在
だから、訴えを退けたり賠償金額を支払わないように
尽力する「株主の利益の為に」と思考停止する
参考文献としてはジョエル・ベイカンの
「ザ・コーポレーション」をおすすめします
犯人からの電話で指示に従ってしまった店員も
警察からの指示に従って操作に協力する
民間人という「役割に最適化」して思考停止したが故に
異常な行為に及んでしまう
会社側の弁護士も依頼人の利益の為に「役割に最適化」
この事件で浮かび上がってくるのは
「人は誰でも条件が揃えばどんな異常行為も平気で行える」
って事で、むしろ日本の方がこういう事は起こりやすい
んじゃないかと
犯行が止まず連続して行われた理由は、イジメの構造と
同じで「楽しかったから」
犯行が成功したことによって犯人の脳内で脳内物質が
分泌されて気持ちよくなり、それで病みつきになってしまったと
犯人の正体は「警察官になりたかったがなれなかった刑務所の看守」
男は地元の住民に好かれていて、彼を悪く言うものはいなくて
独り身では無く家族持ちであることが分かる
この「一見なんの変哲もない普通の人」ってところも
アイヒマンに酷似していて「俺たちなにも進歩して無いじゃん」と
いや~な気持ちにさせられてやるせなくなります
男は捕まって裁判にかけられますが
結果は証拠不十分として無罪(!)😱
「限りなくクロに近い」んですけど無情な結果に…😩
しかもこの後同様の事件は発生していないです(-_-;)
なお、このドキュメンタリーの制作にあたっては
容疑者だった男は出演を拒否しています…