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本当の奇跡とは、物語を信じること 映画 Netflix「聖なる証/THE WONDER」感想

アイルランドを舞台にした、実はパンクな?映画です

youtu.be

 

<あらすじ>

1862年アイルランド、過去の悲しみに囚われた

英国人看護師が、ある調査で人里離れた村へ

そこには、一切食事をしていないはずなのに奇跡的に

生き続けている少女が居た

<感想(ネタバレあり)>

まずOP、いきなり映画のスタジオから始まり

「私たちは物語あっての存在」のナレーション

 

船の内部と思しき場所で、看護婦リブ・ライト(フローレンス・ピュー)が

食事をしているというメタ的なシーンからスタート

 

この映画の表示に「児童虐待描写あり、性暴力描写あり」って

表示されちゃっているのはネタバレになってしまっていて

うーん、な感じ😅

 

そして、4ヶ月食事をしていない

少女アナ・オドネル(カイラ・ロード・キャシディ)が

本当に食事をしていないか観察する為にリブが派遣されてくる

 

まずリブが来ている服の色が青色で、明らかに他の人の

来ている服の色と際立たせている

 

アナの来ている服の色は白っぽい、バニラっぽい色で

これは無垢であるということですかね?

 

リブは一人になった時に小さい赤ん坊が履く靴下を見ながら

何かの薬(コカイン?)に溺れいてる

針で自分の指を刺しているのは自傷癖があること

心に傷を負っていますね、夫も亡くしているみたいですし

 

新聞記者のウィルとは最初、食事をしている最中に

話しかけられ、皿を持って階段を上がった

ことからこの時点では二人の関係は良くないが

その次にウィルが飲み物の入ったコップを渡して

彼女が受け取っているシーンで、関係が好転している

 

その後、ウィルの凄惨な過去を聞いて彼に

共感したので彼と結ばれる

そしてリブが生まれてまもない娘を

亡くし、夫は蒸発していた事が分かる

 

中盤でウィルが、アナに「ソーマトロープ」という玩具を渡します

これは、2つの絵が残像現象によって1つの絵に見える

もので、「籠の外から飛び立った鳥」と「籠の中にいる鳥」の

絵が描かれている

 

受け取ったアナが「中?外?」と聞き、ウィルが

「決めるのは君だ」と告げる

これは、アナが居る家に象徴させた「抑圧された社会」

から「出るか出ないかは自分で決める事が出来る」と

いうこと、似た様な状況に居る観客へのメッセージですね

 

そしてソーマトロープが回転して、その絵に

リブが重なる事から、彼女もまた過去の悲しみに囚われて

いる存在だが、自分の意志でそれを変える事が出来ると

 

アナが食事をしていなくても生きている理由が

実は兄に9歳から性的暴行を受けていた事

食事は母親が、キスの際に口移しで「鳥のように」食べさせて

生かしていた(兄は死亡)

 

この「母親からのキス」も性的暴行にあたるはず

 

彼女は家族全員から虐待を受けていた

 

理由が分かって、アナは食事を拒否し病んでいく

このままではアナが衰弱死してしまうので

リブはなんとかアナを救おうとしますが

依頼者たちは渋ってアナに直接問いただし、アナは

「天からのマナ」だと答える

 

彼女が実は食事を取っていると告白すると

住んでいる家を追われて教会からも破門されるから

 

このままどん詰まりのバッドエンドなのかなと

憂鬱でしたが、ここから展開がパンクな感じになる

 

最後、リブが家を燃やすのは、非常にパンクな

「こんな社会無くなっちまえ!」って静かに絶叫しているみたいに

感じました😆

 

家を燃やした事で、アナは死んだ事になり

奇跡の存在であるので死体が無いのも説明がついてしまう

 

アナの住んでいた、というより「閉じ込められていた」家は

当時の閉塞感漂うアイルランド社会を象徴させている

 

リブがアナを家から、「中」から「外」に連れ出し

何かを食べさせるシーンは、聖体拝領の象徴かと

 

そして母親が我が子を見下ろす視点

リブはアナに亡くした我が子を重ねている

キリスト教的には青色は聖母マリアの色という事なので

ここでリブはアナにとってのマリア様なんだと

 

家を燃やしている時に火が燃え移ってリブが

手に怪我するのはキリストの聖痕で

リブはキリストでもあるという一人二役

名前がリブ・ライト(生を照らすもの)ということかと

 

アナを家からウィル(Will「意志」)が連れて行く

アナの服の色が赤色に変化しているのは

殉教者の血と情熱の色

 

アナは家から出たことによって、一度死んだ

だから殉教者になったので服の色が赤なんじゃないかと

そして名前が「アン」から「ナン」に変わり生まれ変わる

 

3人は記念写真を撮って家族として人生をやり直す

 

終わりに、またスタジオに戻って女性が

「中、外、中、外」と言ってEND

ソーマトロープは映画の原型ともされているので

非常にメタ的な終了の仕方

 

なんというか宗教批判の映画なのかなと

思ったら宗教的な隠喩がちりばめられていて

不思議な感覚です😐

 

こういうシーンや登場人物が限られた映画は

たとえ時代が違っても、普遍的な価値を付与させて

表現出来るんですよね

 

地味だけど良作です!おススメです\(^o^)/