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歴史改ざんと反知性主義礼賛映画「フォレスト・ガンプ」に対するアンサー 映画「大統領の執事の涙」感想(2013年公開)

日本では誤解されている映画「フォレスト・ガンプ

に対するアンサーとして製作された映画の感想です

 

監督:リー・ダニエルズ(「プレシャス」)

主演:フォレスト・ウィテカー(「バード」)

youtu.be

 

<あらすじ>

綿花畑で奴隷の息子として育ったセシル(フォレスト・ウィテカー)は

父親を目の前で白人に殺された過去があり

そこを抜け出すが、路頭に迷い食う物に困って

店に盗みに入り、そこで黒人店主に見逃してもらい

執事の振る舞いを教わる

 

その後高級ホテルの執事になり、ある日

ホワイトハウスの執事になる事を推薦される

 

それから34年の間に、彼はアメリカで起こった

黒人の人権運動の歴史を見届ける

 

<感想>

この映画を観る前に予習として

フォレスト・ガンプ」(1994年公開)を観る事は必須です

 

監督:ロバート・ゼメキス(「バック・トゥ・ザ・フューチャー」)

主演:トム・ハンクス(「プライベート・ライアン」)

 

何故なら、リー監督は「フォレスト・ガンプ」に対する反論として

この映画を作ったということなので

 

恥ずかしながら、私は「フォレスト・ガンプ」を人の解説を聴くまで

「ヒューマンドラマ」だと誤解してました(-_-;)

 

この映画は、問題点ありまくりの

「歴史の改ざんと反知性主義礼賛」映画だったんですね

以下、作品内の問題の箇所

・ガンプの住んでいるアラバマ州で起こった「公民権運動」

 が全く描かれていない

 

・ガンプの憧れの人「ジェニー」が当時のカウンターカルチャー

 の象徴として描かれているが、監督のロバート・ゼメキス

 曰く「アメリカの犯したあやまち」であるとして

 彼女を徹底的に馬鹿にする

 全裸にしたり、つきあった学生運動のリーダーをDV野郎として描写

 最後にはエイズで死亡させる

 

ジョン・レノンに中国を肯定する様な発言をCG合成でさせる

 

ベトナム戦争に行った黒人「バッバ」が、戦争に行った

 おかげで成功してお金持ちになる、黒人は実際には戦死したり

 体の一部を失ったりしたのに

 

知能指数の低いガンプを「アメリカのあるべき姿」としたのは

 「反知性主義の礼賛」で、それは民主主義の否定しているって事

 

それを、主役で民主党支持者のトム・ハンクスに演じさせる

とか、かなり意図的にやっていて嫌な感じなんですよ

1994年に映画が公開された時はプロパガンダとして

利用されたそうで、なんというかいい加減にしろよと

 

大統領の執事の涙」で描かれる事は以下の通りですが

要するに60、70年代に起こった事をちゃんと描くという

当たり前の事なんですけど

・「公民権運動」をちゃんと描いていて、キング牧師が出て

 というか、ちゃんといたということが描かれて、彼は射殺される

 

・黒人がベトナム戦争に参戦するけど、戦死する

 金持ちにはならない

 

・勉強することで知識を身に付け(無知では無くなり)

 自分の置かれている状況を自覚し、目覚めて

 待遇の改善の為にアクションを起こす

といった内容を描いていて、「フォレスト・ガンプ」が

60、70年代の時代になにがあったのかを意図して

目を背けていたんだと訴えかけているんですね

 

↓ここから映画の感想↓

セシルの母親ハッティがマライア・キャリーなのは

気づきませんでした、キャストを調べて初めて分かりましたね

スッピンだったもので(-_-;)

 

主役のセシルをフォレスト・ウィテカー

決めたのは、もしかした彼の名前に「フォレスト」が

ついていたからなんでしょうか?

 

まあ普通に名優だからと考えた方がいいでしょうね😊

 

黒人店主の元で、執事としての振る舞い方を教わり

そこでの教えはそのまま黒人がアメリカ社会で

生きて行く方法で、最後に「ハウスニガーという言葉は使うな」

と厳しく諭される

 

これは、人としての誇りを失わないように、言葉づかい

で自分の尊厳を貶めない様にアドバイスしてくれて

セシルにとってのメンターだったんですね

 

それから高級ホテルでの仕事が評判になって

ホワイトハウスでの執事にスカウトされる

そして、そこで働いている執事が全員黒人なんですよ!

ホワイトハウス」なのに!

 

この映画が、ホワイトハウスで34年間執事として

務めた実在の人物の「ユージン・アレン」の

人生を元に作られているので、執事全員黒人は

事実なんでしょうね

 

ホワイトハウス内での執事は、「空気の様な存在」

なので誰も気にせず、というか執事側がそういう

振る舞いを身に着けているので気にしないんですけど

 

彼らの見ている前で黒人に対する発言を政治家達が

していて、露骨な人種差別発言をする人もいれば

来る前は良く思われていなかったけど、大統領の職務を

遂行するうちに「目覚めて」人種差別の問題に取り組む

大統領(ケネディ)が居たり、「黒人差別の改善の歴史」の

時代を執事の立場から見届ける映画なんですよね

 

セシルの長男ルイスは「声を上げて政治活動をする黒人」で

父親セシルは「政治に関わらない様にしている黒人」

という対象的な描写をしていて

 

レーガン大統領の時代に、セシルはホワイトハウス

客として招待され、その時に執事の視点から

もてなされる側の視点で執事を見ると

自分達執事がいかに白人に合わせて生きていたかに気づく

 

そしてルイスが黒人の地位向上の為に戦っている

ヒーローである事に気づいて彼の元に向かい

謝罪し、共に収監される

 

両者はいったん決別し、和解にいたるのは単純に

親子の和解だけではなく、対立していた黒人内の

和解でもあるんですよね

 

ベトナム戦争で戦死した次男のチャーリーは

アメリカから搾取された黒人」ですね

 

セシルは長い年月をかけて執事達の待遇を改善し

執事を引退後、黒人初の大統領バラク・オバマ

客人としてホワイトハウス招待され、執事ではない黒人のスタッフ

が出迎えてくれる

 

バックにはアメリカ合衆国初代大統領「ジョージ・ワシントン」の

肖像画をぼやけて見せているのは、彼の時代から

ずいぶん遠くまで来たという演出

 

「案内しますよ」と言われ「必要ない(黒人の尊厳は達成された)」と

胸を張って歩き出し、オバマの「Yes! We Can!」のセリフが聞こえてEND

 

<終わりに>

2013年にアメリカでは揺り戻しが起こって

黒人に対する差別が復活し、「ブラック・ライヴズ・マター」という

運動(2013年7月)が発生したりしましたが、そのひと月後に

この映画が公開されたのは、なんか運命的なタイミングの良さを感じて

なにか問題があってもそのたびに運動をしたり、こういう映画でちゃんと

反論を出来ていて、そこらへんはまだ健全に民主主義が

機能しているんだなとは思いますが

 

現在、ドナルド・トランプによるでたらめなふるまいで

またどうなるかわからなくなってますね

 

映画に限らず表現は、こちらの目を覚まさせてくれる

ものもあれば、眠ったままにさせる作品もあって

ちゃんと観ないと騙されちゃうんですね

気を付けます、おススメです\(^o^)/