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無くしたトランシーバーの行方は… 映画「こちらあみ子」感想(2022年公開)

今村夏子原作の小説を映画化した感想です

 

 

監督:森井勇佑

主演:大沢一菜

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こちらあみ子

 

<あらすじ>

あみ子はちょっと風変わりな女の子

優しいお父さん、いっしょに帰ってくれるお兄ちゃん

道教室を開いているお母さん、同級生ののり君

彼女は元気に過ごしていた

 

だが、彼女の純粋無垢な行動はまわりの人たちを

否応なく変えていくことになる…

 

<感想>

まず、案内文が詐欺過ぎます!

これだけだど「ほのぼのファミリードラマかな?」と

勘違いして映画館に足を運んだ人たち居るでしょ!

 

OP、学校の校舎を横から撮るシーンから

「やっと終わったー」と誰かのセリフ

主人公のあみ子(大沢一菜)が出て来て

家に帰り、そこでは母親が書道教室を開いていて

彼女は唇の下に大きいホクロがある

 

あみ子は彼女のホクロがやたらと気になっていて

そこだけを見つめていて、彼女をちゃんと

ひとりの人間として見ていない感じ

 

あみ子を「あみ子さん」とよぶ母

ここから彼女は実母では無く、父親の再婚相手である事が

想像出来て、後半やっぱりそうだったと分かります

 

兄とじゃれ合うあみ子が「ハゲ見して」と言い

兄貴が頭にハゲがあるのを見せる

ここはどうやら父が再婚した事で兄がストレスを感じていて

遠くからバイクの音が聴こえるのは

兄貴がこの後グレる伏線

 

あみ子が父と継母、兄を使い捨てカメラで写真を

撮るシーン、見た目を気にする継母を

待たずに写真を撮ってしまうあみ子

ここらへんで彼女たちはおそらく分かり合えていない

のがわかる

 

誕生日におもちゃのトランシーバーとクッキーを

もらい、クッキーについたチョコだけを舐めとって

それを男友達の「のりくん」に食べさせる

 

ここは、あみ子が無神経というか、他人の気持ちを

理解することが出来ない事を表現しています

 

そして、時折さしはさまれる昆虫や爬虫類は

あみ子がある意味「普通の人間では無い存在」

である事を示唆してます

 

そしてこの映画の決定的なシーン

継母が死産して落ち込むが、それを励ますというか

癒すような公園のシーンからの「弟の墓」を作る

しかも、ファンシーなキャラクターのシールをあしらってね😅

 

ここで継母は壊れてしまい、兄はグレて

家庭は崩壊していく

その原因を作ったのは他ならぬあみ子

 

のりくんにも「お前のせいだ」と言われて蹴られる

 

小学校から中学校に進学するあみ子

そこでいじめらるけど

原因は彼女の奇行にあるんでしょうね

 

なにせちゃんと靴を履いてないし、ロクに風呂に

入っていないので、体臭がきつい事を坊主頭に指摘される

 

自分の部屋に帰ったらベランダから奇妙な音が

聞こえて、それがお化けの出す音だと

考えたあみ子は「お化けなんて無いさ、お化けなんて嘘さ」

と言って否定しようとするけど、まだ聞こえる

 

中盤過ぎ辺りから「これってもしかしてホラー映画?」

と思いました

 

そして、「だとしたら恐怖の正体は何?誰?」と

思いましたが、その正体はたぶんあみ子かと

思ったら違う

 

この恐怖の正体はまわりの大人たちの無関心さですね

特に父親のあみ子への対応がヒドい

 

確かに彼女は他人の気持ちを推し量る事が出来ず、振る舞いは

余りにもまわりに合わせられない社会不適合者で

中学生になってもそれはまるで変わらず

 

彼女、何らかの精神疾患を抱えていて

保健室に入るシーンで「また来たか」と言われる

なんで保険の先生は、彼女が問題を抱えているのに

気付けないんでしょうか?

 

それとも面倒だからこの問題に取り組みたくないんでしょうか?

 

そこで、おそらくのりくんが学業のストレスで疲弊している

事も気付かず、彼にボコボコにされて鼻の骨を折られて

重傷を負う

 

けれど、どうやら彼女はなんで自分がそういう

目に遭わされたのかを自覚出来て居ない

 

継母が壊れてしまって、父は継母と離婚して彼女を捨てる

「引っ越そうか?」と父

でも、そういう意味では無かったのが最後わかります

 

ベランダの音が相変わらず止まず、あみ子は

壊れたトランシーバーに「こちらあみ子」と

呼びかけて助けを呼ぶ…(-_-;)

来ないよ!あみ子!

 

もちろん来ない、と思ったら変わり果てた兄貴が

突然現れて、ベランダの音の正体が判明する

 

そこには鳩が居て、鳩は卵を産んでいた

それはつまり「生まれて来てない命」

の象徴で、それは継母が死産した「妹」で

兄貴はそれをぶん投げて音は止む

 

卵は割れず木の枝に引っかかったまんま…

 

学校のシーンに戻って、小学校以来の坊主頭の同級生が

「お前はしつこくて、気持ち悪い」と言われて

どうやら自分がおかしい奴だと認識されていた事を

初めて告げられるも、自分ではどうおかしいのかわからないあみ子

彼だけがあみ子本人に異常がある事を教えてくれる

 

終盤の「引っ越し」のシーンで

あみ子は父親に捨てられます

ここでもまだ彼女は自分が置かれた状況を

理解できず、スキップをする始末

 

ラストシーン

スキップをしながら海辺に出る

ここは「あの世」を表していて、向こうに死者が船に

乗りながら出て来て「おいで、おいで」をする

 

はたから見ればあみ子は詰んでいて、いっその事

死んでしまった方がましなのでは無いのかと

思うけど、彼女は「バイバイ」のしぐさをして

あの世に向かうのを拒絶する

 

後ろから、フレームの外から「まだ冷たいじゃろ」と声をかけられ

「大丈夫じゃ」と無邪気に答えてEND

 

いや、全然大丈夫じゃねえだろ!

と突っ込まざるを得ないんですけど、この子

この先どうなるんだろうと不安にさせて映画は終わる

 

グレちゃった兄貴は、たぶんあみ子の未来の姿で

このままだと彼よりも悲惨な未来になる可能性の方が高いけど

映画はここで終了して余白を残す

 

たぶんあみ子はなんらかの知的障害を負っていて

それ故に周りを不幸にさせるというか

自分がまわりの人に悪影響を及ぼしているのが

理解出来て居ないんでしょう

 

作品内ではその事を明言しないんですけどね

 

だから父親が彼女を捨てる時に、蛇が蛙を捕食する

シーンがさしはさまれるのは、あみ子の将来を

暗示している様に見えちゃいます

 

スタッフロールで消えた片方のトランシーバーは

いちばん最後に現れる監督のクレジットに表示されていて

彼女の「こちらあみ子、応答せよ」という声を監督はちゃんと

聴いているよという事なんですが

このご時世だと、どうしてもあみ子はこの先いい人生には

ならないのはどう見ても読めてしまう😩

 

この映画は、あみ子役の大沢一菜さんの

演技力で成り立っていて、彼女の自然な演技が

作品のリアリティを際立たせています

 

たぶん見ていると「え、これ何?」って

ぞわっとするのでおススメです\(^o^)/