「ロボコップ」「ブラックブック」でおなじみの
ポール・ヴァーホーヴェン監督のスリラー映画の感想です
「ELLE」はフランス語で「彼女」という意味
監督:ポール・ヴァーホーヴェン
主演:イザベル・ユペール
今回、あらすじから既に「要注意」なので、受け付けない方は
回れ右をしてお帰りください🙇
<あらすじ>
主人公ミシェル(イザベル・ユペール)は自宅に侵入してきた
男にレイプされる
事後処理を自分で淡々としたのち(!)
友人たちに自分がレイプされた事を告白する
周囲が啞然とし、警察に相談する事をすすめるが
彼女は過去の経験から警察を信用していないので
それはしない
やがて物語の進行に伴い、彼女がどういう人間なのか
わかっていく…
<感想>
なんだろう、簡単な映画では無かったです
それは、難解と言うか「え、なんでそうなるの?」の
オンパレードで、一人だけではこの映画の
本質は分からなかったですね
だから、人の感想とか紹介とかを
読んで回って、なんとかこの映画を
理解出来た様な気がします(^^ゞ
最初、レイプ被害者の再生の話なのかとか
犯罪加害者の親族がどういう目に遭うのかを
描いた社会派なのかな?とか思って観ているとそれも違くて
彼女はそもそもレイプされても全然平気で
淡々と後始末をしてから病院に一人で行って
処置をしてもらう
で、彼女は39年前に起こった凶悪な連続殺人事件の
加害者家族で、その事で未だに周囲から迫害を受けている
事が分かる
彼女はそんな目にあってもどこ吹く風で、全然
へこたれない
しかも彼女、社会的には成功者でいい暮らしをしていて
ゲーム会社の社長、作っているゲームはなんと
いわゆる「クッ殺」系のゲームで、あんな事が
あったのに彼女「表現がヌルい!もっと過激に!やり直し!」
とか言って駄目出しする
ここまで来ると強いというか、どうコメントしていいのか
わからないんですけど…(;'∀')
彼女は父親が連続殺人事件の犯人で、しかも
彼女も父親から暴行を受けているから、そのトラウマ
の話かなと思ったらそれも違うんですよね
どうやらこれは彼女がいったいどういう
存在なのかを把握する事がこの映画を読み解く
鍵になっているのかと
殺人事件が起きた事により、彼女は警察や
マスコミ、つまり社会を信用出来なくなり
不信に陥っている、という訳でもなく
どうも結果として社会からはじかれてしまっているから
鼻っからそういう奴らをあてにしていない世界の住人なんだと
だから、観客が社会的に受け入れられている様な
人だったりすると「?、なんなんだこれは?」って
クエスチョンマークがつきまくりになるんですよね
物語の軸としては、レイプの犯人探しとゲームの開発の
進行に合わせて、彼女がどういった存在なのかが描かれます
彼女は映画に出て来るほとんどすべての
男から好かれて、セックスしまくりなんですよね
他人の夫とも平気でイタす
しかも同性もイケるクチで、「生物としてとても強い」
「強い女」というより「常人には計り知れない何か」
でも、彼女は殺人者の父親と、彼を赦している
母(若い男を囲って、結婚しようとしてる)を
決して赦さない
「赦せない」ではなく「赦さない」
母親が死んだときも、葬式を挙げるでも無く
淡々と散骨する、本当にサバサバと
そして、自分をレイプした奴の正体が判明するん
ですが、それはなんとお隣さんだった!😱
しかも、これだけでは終わらず
なんと彼女はソイツとなぜかイタすんですよ!
しかも普通のプレイではなく「レイプされた状況を
再現しながら行為に及ぶ!」
ここ、一人でこの展開を咀嚼しようとしても
出来なくて、どういう事なのかというと
そもそも、レイプした男は自分と同じ社会から
はじかれている存在だった、そこで彼を「赦して(!)」
彼女は彼の求めに応じたと…🤨
というか彼女、以前レイプしたソイツを双眼鏡で
覗き込んで「自分でしちゃう」という女性なので
彼と行為に及ぶのは、望むところでもあるんですよね
彼女、父親と最後に面会しようとして、連絡を入れてから
会いに行くと「彼は自殺した」と告げられる
そこで、彼女が父の死亡推定時刻を聞くと
彼女が連絡した後に自死している
彼は「逃げた」んですね
ここでも、普通なら対話によって父を理解する事
が出来なかったから、煩悶とか懊悩とか
するのかと思ったら、しない
なんか「ふー、やれやれ」って感じ
この映画に出て来る男は総じて情けない
ろくでなしで、ひとりもまともな男は出て来ません!
終盤、やっぱり「え?どうして?」っていう
シーンが2か所出て来ます
それは、ミシェルの息子にレイプ犯である夫が
殺された事を、その妻がミシェルに「ありがとう」って
感謝して彼女を赦す(!)
「彼は病んでいたの」という妻
どうもこれはレイプ犯である夫が殺される事によって
解放されたと
でもそれって、妻は夫の問題行動をいままで
見て見ぬふりをして来たって事なんですよねー(-_-;)
彼の妻は宗教が支えになっているのでここは
宗教的な赦し
ミシェルはラスト、共同経営者で、若干
同性愛っぽい関係にあった女性の夫と自分が
関係を持っていた事を明かす
「嘘をつきたくないの」とミシェル
ラストシーン、その女性は「夫と別れた」と言って
彼女を「赦し」、「あなたと一緒に住めない?」って聞いてきて
まさかの百合END!😯
加害者の親族であるが故に「赦されなかった」
ミシェルが2回「赦される」という終わり方
この映画を観ている最中、終始頭の上には「?」と
クエスチョンマークが浮かびっぱなし
でしたが、観ていると彼女が本当にカッコいいんですよ
それは何故そう感じたのか
彼女、社会をあてにしていないからなんですよね
過去の経験から、社会の外にはじき出された
ので、ある意味彼女は自由でエネルギッシュな存在
だから、彼女はとても魅力的
ここらへん、以前に紹介した「サヴェージウーマン」
のラストを思い出し、「社会からはじき出され、社会を
あてにしない存在になったが故に生命力溢れる存在になる」という
点で一緒に感じました
公開当時、レイプシーンやその解釈に
避難轟轟だったそうで、まあ監督がヴァーホーヴェン
なので、そういう話題沸騰的な扱いになるのは
避けられないんですよねー😑
社会に受け入れられている人ほど観ていて「?」の
オンパレードで、ゆさぶられまくります!