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「常人では計り知れない何か」について 映画「エル ELLE」感想(2016年公開)

ロボコップ」「ブラックブック」でおなじみの

ポール・ヴァーホーヴェン監督のスリラー映画の感想です

「ELLE」はフランス語で「彼女」という意味

 

監督:ポール・ヴァーホーヴェン

主演:イザベル・ユペール

youtu.be

 

今回、あらすじから既に「要注意」なので、受け付けない方は

回れ右をしてお帰りください🙇

 

<あらすじ>

主人公ミシェル(イザベル・ユペール)は自宅に侵入してきた

男にレイプされる

 

事後処理を自分で淡々としたのち(!)

友人たちに自分がレイプされた事を告白する

 

周囲が啞然とし、警察に相談する事をすすめるが

彼女は過去の経験から警察を信用していないので

それはしない

 

やがて物語の進行に伴い、彼女がどういう人間なのか

わかっていく…

 

<感想>

なんだろう、簡単な映画では無かったです

それは、難解と言うか「え、なんでそうなるの?」の

オンパレードで、一人だけではこの映画の

本質は分からなかったですね

 

だから、人の感想とか紹介とかを

読んで回って、なんとかこの映画を

理解出来た様な気がします(^^ゞ

 

最初、レイプ被害者の再生の話なのかとか

犯罪加害者の親族がどういう目に遭うのかを

描いた社会派なのかな?とか思って観ているとそれも違くて

彼女はそもそもレイプされても全然平気で

淡々と後始末をしてから病院に一人で行って

処置をしてもらう

 

で、彼女は39年前に起こった凶悪な連続殺人事件の

加害者家族で、その事で未だに周囲から迫害を受けている

事が分かる

 

彼女はそんな目にあってもどこ吹く風で、全然

へこたれない

 

しかも彼女、社会的には成功者でいい暮らしをしていて

ゲーム会社の社長、作っているゲームはなんと

いわゆる「クッ殺」系のゲームで、あんな事が

あったのに彼女「表現がヌルい!もっと過激に!やり直し!」

とか言って駄目出しする

 

ここまで来ると強いというか、どうコメントしていいのか

わからないんですけど…(;'∀')

 

彼女は父親が連続殺人事件の犯人で、しかも

彼女も父親から暴行を受けているから、そのトラウマ

の話かなと思ったらそれも違うんですよね

 

どうやらこれは彼女がいったいどういう

存在なのかを把握する事がこの映画を読み解く

鍵になっているのかと

 

殺人事件が起きた事により、彼女は警察や

マスコミ、つまり社会を信用出来なくなり

不信に陥っている、という訳でもなく

どうも結果として社会からはじかれてしまっているから

鼻っからそういう奴らをあてにしていない世界の住人なんだと

 

だから、観客が社会的に受け入れられている様な

人だったりすると「?、なんなんだこれは?」って

クエスチョンマークがつきまくりになるんですよね

 

物語の軸としては、レイプの犯人探しとゲームの開発の

進行に合わせて、彼女がどういった存在なのかが描かれます

 

彼女は映画に出て来るほとんどすべての

男から好かれて、セックスしまくりなんですよね

他人の夫とも平気でイタす

 

しかも同性もイケるクチで、「生物としてとても強い」

 

「強い女」というより「常人には計り知れない何か」

 

でも、彼女は殺人者の父親と、彼を赦している

母(若い男を囲って、結婚しようとしてる)を

決して赦さない

 

「赦せない」ではなく「赦さない」

 

母親が死んだときも、葬式を挙げるでも無く

淡々と散骨する、本当にサバサバと

 

そして、自分をレイプした奴の正体が判明するん

ですが、それはなんとお隣さんだった!😱

 

しかも、これだけでは終わらず

なんと彼女はソイツとなぜかイタすんですよ!

しかも普通のプレイではなく「レイプされた状況を

再現しながら行為に及ぶ!」

 

ここ、一人でこの展開を咀嚼しようとしても

出来なくて、どういう事なのかというと

そもそも、レイプした男は自分と同じ社会から

はじかれている存在だった、そこで彼を「赦して(!)」

彼女は彼の求めに応じたと…🤨

 

というか彼女、以前レイプしたソイツを双眼鏡で

覗き込んで「自分でしちゃう」という女性なので

彼と行為に及ぶのは、望むところでもあるんですよね

 

彼女、父親と最後に面会しようとして、連絡を入れてから

会いに行くと「彼は自殺した」と告げられる

 

そこで、彼女が父の死亡推定時刻を聞くと

彼女が連絡した後に自死している

 

彼は「逃げた」んですね

ここでも、普通なら対話によって父を理解する事

が出来なかったから、煩悶とか懊悩とか

するのかと思ったら、しない

なんか「ふー、やれやれ」って感じ

 

この映画に出て来る男は総じて情けない

ろくでなしで、ひとりもまともな男は出て来ません!

 

終盤、やっぱり「え?どうして?」っていう

シーンが2か所出て来ます

 

それは、ミシェルの息子にレイプ犯である夫が

殺された事を、その妻がミシェルに「ありがとう」って

感謝して彼女を赦す(!)

 

「彼は病んでいたの」という妻

どうもこれはレイプ犯である夫が殺される事によって

解放されたと

 

でもそれって、妻は夫の問題行動をいままで

見て見ぬふりをして来たって事なんですよねー(-_-;)

 

彼の妻は宗教が支えになっているのでここは

宗教的な赦し

 

ミシェルはラスト、共同経営者で、若干

同性愛っぽい関係にあった女性の夫と自分が

関係を持っていた事を明かす

「嘘をつきたくないの」とミシェル

 

ラストシーン、その女性は「夫と別れた」と言って

彼女を「赦し」、「あなたと一緒に住めない?」って聞いてきて

まさかの百合END!😯

 

加害者の親族であるが故に「赦されなかった」

ミシェルが2回「赦される」という終わり方

 

この映画を観ている最中、終始頭の上には「?」と

クエスチョンマークが浮かびっぱなし

でしたが、観ていると彼女が本当にカッコいいんですよ

それは何故そう感じたのか

 

彼女、社会をあてにしていないからなんですよね

 

過去の経験から、社会の外にはじき出された

ので、ある意味彼女は自由でエネルギッシュな存在

だから、彼女はとても魅力的

 

ここらへん、以前に紹介した「サヴェージウーマン」

のラストを思い出し、「社会からはじき出され、社会を

あてにしない存在になったが故に生命力溢れる存在になる」という

点で一緒に感じました

2ki3suke.com

 

公開当時、レイプシーンやその解釈に

避難轟轟だったそうで、まあ監督がヴァーホーヴェン

なので、そういう話題沸騰的な扱いになるのは

避けられないんですよねー😑

 

社会に受け入れられている人ほど観ていて「?」の

オンパレードで、ゆさぶられまくります!