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「お前の所属している社会はまともなのか?」 映画「JOKER」感想(2019年公開)

ダークナイト」のヴィラン、JOKERの

誕生譚です

 

監督:トッド・フィリップス

主演:ホアキン・フェニックス

 

<あらすじ>

舞台は1981年のゴッサム・シティ

そこは荒廃していて、治安も悪い状態

そこでアーサー・P・フレック(ホアキン・フェニックス)は

派遣ピエロとして母とふたり、慎ましく生活していた

 

彼には憧れているコメディアン、マレー(ロバート・デニーロ

が居て、彼のトークショーに出るのが夢であった

 

<感想>

この映画を観賞する前に、クリストファー・ノーラン監督の

ダークナイト」(2008年公開)を予習しておくのは必須となっております

 

観るのを避けていたんですよね、実は

それは、内容がだいたい想像出来て

その想像とおりの展開になるんですけど、それを

観たく無かったんですよ

 

「感染」しちゃうから

 

ダークナイト」で、JOKER役を演じたヒース・レジャー

おそらく、役を演じる内に引っ張られるというか

「この世界の深淵」を覗いてしまったんでしょう

映画の影響でお亡くなりになってしまっているので

ただこの映画を観るだけでも自分も引っ張られるだろうなと

案じてました

 

そして、予感は的中して、私も引っ張られました

 

アーサーは冒頭、なんと子供にボコられ

それを周りの人は誰も助けてくれない

 

職場では怒られていて、売れっ子って訳でもなく

自身は「発作的に笑いだしてしまう病気」を抱えていて

あまりいい状態ではない

 

だが、彼の支えは、母親と

憧れのコメディアン、マレーのトークショー

いつか出演しようとしている事

 

子供にボコられたのを聞いて

職場の同僚が拳銃を貸す

 

それを病院の慰問で携帯してしまい

それがバレて解雇され、失意のうち電車に

乗り込み、運命の分かれ道

 

そこでスーツを着た酔っ払い3人にからまれる

意図せずに暴発気味にまずひとりを射殺してしまう

 

そこから2人目、3人目と殺し

「俺、ヤッっちゃったよ!」と大慌てで

帰宅する

 

が、そこで彼はダンスをする

楽しかったんですよね

 

それから、彼は気になっていたシングルマザーと

「イタす」

でも…

 

職場で、自分の身の回り品を整頓する場面で

彼はタイムカードを壊す

ここは、ルールに縛られる事の否定

 

階段を降りる時に、掲示された文字をスプレーで

書き換え「笑うな」としてドアを開ける

 

ここで開けたドアからまぶしい光が溢れているんですよね😅

 

アーサーは自身の精神疾患の為に薬を処方されているけど

ゴッサム・シティの荒廃の影響で福祉は断たれて

薬は処方されなくなる

 

解雇され、殺人を犯し、薬は切れて

彼は追い詰められる

 

帰宅すると、母は手紙を送ろうとしていて

それはゴッサム・シティの市長に立候補している

トーマス・ウェイン宛で、どうやら自分は

トーマスの息子では無いかと思い、いったん

ウェインの屋敷に向かうアーサー

 

そこで、後のバットマン、子供時代の

ブルース・ウェインに遭遇する

ここで、ウェインの首を絞め気味になったと

思ったら、無理やり笑顔を作ろうとする不気味な場面

 

ここは、ダークナイト以前にふたりは会っていたんだ

という描写

 

アーサーは愛情に飢えていて、トーマスを父だと

思って、ただ愛して欲しくて彼に会いにいくけど

「あの女(母ペニー)はイカれた女だ」と言って彼を拒絶する

 

アーサーは母親がイカレ女と言われた事で

彼女を調べるんだけど、ここで自分が養子で

母の実子では無く、しかも彼女から虐待されて

いたが故に自分が精神疾患になっている事を知ってしまう

 

彼を社会に繫ぎ止めているのは、母の存在と

マレーのトークショーに出演する事だけど

 

まずここで、母が消える

彼が殺してしまうから

実母じゃない上、虐待されていたから

たぶん彼は、つらい記憶だったから無意識に

忘れていたんでしょうね

 

そして、彼にとってはおそらく父として

慕ってもいたであろうマレーから

「笑われてしまう」

「笑わせたかった」のに

 

これでもう彼を社会に繫ぎ止める理由が

無くなってしまうんですよね

 

職場の仲間が訪問して来て

「口裏合わせようぜ」って言ってくるのを

ハサミの切っ先でグサリ!

 

訪問してきたふたりのうち、元凶となった

銃を渡したやつは殺すけど、いつも

優しかったやつは逃がしてあげる

そいつは優しかったから、「フェア」だったから

 

最初の殺しをした時に、シングルマザーをイタす

シーンだけど、実は彼の妄想で不法侵入して来た

アーサーに怯える

 

はっきりとは写さないけど、彼女

殺されてますね

 

そしてクライマックス

憧れのマレーの舞台に出る

ここで「JOKERと呼んでくれ」とアーサー

 

ここまで来る途中、彼は警察に追われるんだけど

彼の影響で、ピエロを付けた暴徒が溢れているので

彼は難を逃れ、途中ピエロの仮面をつけていたけど

それを捨てる

 

このシーンで、捨てられた仮面を長めに

写すのは、もちろん「仮面を脱ぎ捨てた」という事

「社会から降りた」んですね彼

 

トークショーで無茶苦茶をやり始め

「世の中は最低だ」と「JOKER」

いままでの経過を観て来た我々は、彼の発言を否定出来なくて

彼に「感染」してしまい、マレーという「父」を

殺してしまう事に納得してしまう

 

流石に警察に捕まり、パトカーで

連行されるけど、彼に感染した「見ず知らずの他人」

に今度は助けられる!

 

そして、パトカーを舞台にして

彼は暴徒から喝さいを受ける事で

自分の夢を叶えてしまう…

 

ヴィラン、「JOKER」の完成ですね

これじゃもう社会に戻ろうなんてする訳

無いですよねー😑

 

その裏で、暴徒がウェイン夫妻を殺し

ここで、バットマンが生まれるきっかけを作ったのが

JOKERによるものだった事が明かされて

後のダークナイトに繋がっていく

 

ラストシーン

また捕まって、いつものカウンセラーと

会話するJOKER

 

最初の暗めの部屋とは違って、白い部屋で

対比させて、物語冒頭の疲弊していた

アーサーとは対照的に目がギラギラと

生命力に満ちている

 

部屋から出るJOKER

足跡は血でベットリ(もちろんカウンセラーは殺されてる)

軽やかに踊り、外はまたしても

まぶしく光り輝いているEND

 

観賞中に「タクシードライバー」と「キング・オブ・コメディ」

の要素があるな、デニーロ出てるし、と思ったら

オマージュだったんですね

 

批評家の評価が割れた原因は明白で

JOKERが「非社会的存在」だから

彼に感染してしまう事を恐れたんですね

 

映画という表現で、観る者を非社会的存在に

なる様誘惑するという要素を抜き出すと

黒沢清監督の「CURE」と同じですね

CURE (映画) - Wikipedia

 

「CURE」の場合、「催眠暗示」という小道具で

社会的存在である登場人物が自分で

抑圧している欲望、それを実行してしまうと

社会的存在では無くなってしまう欲望を

惹起させ、それを行った者に接触するとその人も

感染し、やがてそれは世界に広がっていくという

恐怖を描いていて

 

主題としては「お前の所属している社会はまともなのか?

降りた方が楽になれるぞ、降りちゃえよ」ってこちらを誘惑し

「自分が社会にとどまっている理由って、実は無いのでは?」と

知ってしまう恐怖なんですよね

 

R15+も納得の危険な映画、おススメです\(^o^)/