アメリカとメキシコの麻薬戦争を描いた
映画の感想です
監督:ドゥニ・ヴィルヌーブ
主演:エミリー・ブラント
<あらすじ>
アメリカアリゾナ州、FBIの捜査官ケイト(エミリー・ブラント)は
誘拐事件の奇襲操作を行い、そこで
誘拐された被害者の大量の死体を発見
家宅捜索中に仕掛けられた爆弾で仲間が死んでしまう
「根を絶たない限りやっている事はただの事後処理だ」
と判断したケイトは、上司の推薦もあって
国防総省のマット・クレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)と
共に、麻薬カルテルのボス、エマニュエル・ディアスの捜索に加わる
メキシコで彼女が見た物は…
<感想>
原題は「Sicario(暗殺者)」で、冒頭にその
タイトルの意味が説明されます
映画の時間が121分とわりと長めなのですが
中だるみが一切ない、最初から最後まで緊張感のある
映画でした
まず冒頭、アリゾナ州での奇襲捜索シーン
問答無用で家に車をぶつけて突入
「ひでえことしやがる」などと思って観ていると
容疑者がそこでとんでもない事をしていた事が分かる
物置小屋に仕掛けられた爆弾で仲間が死ぬ場面も
強烈で、「誰だこんな事をした奴は!」と
こちらも憤り、次の麻薬カルテルのボスを突き止めようと
ケイトが上司に推薦されてメキシコに向かう動機も
うなずけます
国防総省のマットと、元検事の
アレハンドロ・ギリック(ベニチオ・デルトロ)
が一緒になり、メキシコに到着
そこでブリーフィングが行われ
「最後は君も理解する」と告げられる
ケイトはどっちかというと、観客目線の人物で
メキシコの、それも「フアレス」という地域で
彼女は見せしめに吊るされた遺体や、警察は
基本腐敗しているような状況に放り出され
「え、何ここ?」って感じにさせ、観客と同一化させる
ここらへんから、時折普通の警官家族のシーンが
さしはさまれますが、この警官は後の
強烈なシーンで登場します
そして、混雑した車が密集した中での
ガンアクションシーンが凄くて
地元のメキシコ人の目線だと、危ない奴が
特定出来て、ケイトは状況に流されるまま
ほぼ唐突に銃撃戦、というよりほぼ一方的な
殺戮に近い展開になり、事前に警告されたとおり
腐敗した警官のひとりがケイトに銃を向けて
たまらず応戦、なんとか倒す
「違法行為よ!」とケイト、だが「学べ!」と返される
ケイトはバツイチで、子無しのミドル、決して
世間知らずでは無い
FBI捜査官で、奇襲捜査の指揮を任されている事からも
彼女は有能なんだろうという事は分かる
でも、アレハンドロやマットからすると
メキシコの状況をいっさい知らないからウブな少女にしか
見えないんですよね
銀行でマネーロンダリングをしている下っ端を逮捕して
なんとかならないかと考えるけど
相手の方が一枚上手で、彼女はフラストレーションが
溜まり相棒と酒場に行き、そこで相棒の知り合いと
むしゃくしゃしていたのでゆきずりのセックスをしようと
するけど、なんとそいつはケイトを殺そうとしている
暗殺者(Sicario)だった
銀行に手下を逮捕した時に監視カメラに写った
映像で、彼女の面が割れていた、という事は
問題の根深さがわかりますね😩
しかも、彼女が銀行に手下を捕まえに行くのを
特段止めようともせず、殺し屋に襲われることで
麻薬王の情報を聞き出すための囮として
アレハンドロ達に利用されていた事も分かって
ケイトも観客も「ヒドイ!」ってなります
ここらへんで、邦題の「ボーダーライン」の意味が
効いてきて、それは「国境」であったり「法と無法の境目」
であったり、「人種(不法移民のシーン)」や
「善と悪(犯罪を捜査する側と犯罪を犯す側)」等の
重層的な事を表しているんですね
特にアレハンドロは、情報を聞き出す為なら
拷問も辞さず、「使えるものは使う」
それはケイトも同様に、利用するだけの存在で
彼女を引っ張って来たのも超法規的な行動を
法規的に改ざんする為だった事が明かされる
何故、アレハンドロがここまで強引な
捜査をするのかは明かされるんですが
これは直接観て確認して欲しい
彼が強引な捜査をした事の理由はうなずけるのですが
そういう事をしていく内に、彼は「ボーダーライン」を
超えて、相手と同じ怪物になってしまう
途中に何度もさしはさまれた警官、彼の最後は
アレハンドロが怪物になった事の証左
実はこの映画の主人公はアレハンドロだったと
最後、目的を達成し自分が怪我を負わせた
ケイトにした行為は、決して容認できないんだけど
彼の心情は察せられます
「最後は君(見ている観客)も理解する」と
最後に出て来るタイトル「暗殺者(Sicario)」は誰だったのかも
原題も邦題も、この映画の内容を良く表していて
納得で、おススメです\(^o^)/