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母と娘の確執を、脳内マルチバースが、バカとカンフーと「優しさ」で解消する 映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」感想(2023年公開)

 ミシェル・ヨー主演のSFカンフーアクションバカファミリー映画の感想です。

 

監督:ダニエル・クワンダニエル・シャイナート

主演:ミシェル・ヨー

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<あらすじ>

 主人公エヴリン(ミシェル・ヨー)はコインランドリーを経営する中国系の女性で、夫と娘と暮らしている。ある日、別の宇宙から来た夫に全宇宙の命運を任されてしまうが、敵の正体はなんと自分の娘だった!

 

<感想>

 まず「マルチバース」の理解が無いとこの映画、一見さんお断り的な感じがしなくもないですが、映画の中で説明があるので、まあなんとかついていけなくは無いです。

 

 MCUマーベル・シネマティック・ユニバース)作品でも出て来る要素なので、そこらへんはあんまり気にしなくてもいいかも。

 

 序盤に、エヴリンがどういう状況下に置かれているのかの説明がされていて、彼女は自分が経営するコインランドリーが潰れそうで、娘がレズビアンである事を受け入れられず、厳格な父親とも上手くいってなくてストレスを抱え、夫からは離婚届にサインをする様迫られている。

 

 IRS(アメリカ合衆国内国際入庁)のディアドラ(ジェイミー・リー・カーティス)に税金の申告の粗を指摘された事がおそらくトリガーになって、彼女はマルチバースで全ての元凶とされるジョブ・トゥパキと戦う事になるんですけど。

 

 マルチバースは彼女の脳内宇宙、そこで繰り広げられる戦いは彼女の心の葛藤なので、出て来る敵が彼女の周りにいる人達なのは必然、ディアドラに指摘された申告の粗や、家族との問題が解決されるまでの6時間の出来事が、彼女にとってはそれくらい深刻なんだという事ですね。

 

 それにしても表現がいい意味でバカです!😆「バカな事をするほど”跳べる”(力を得られる)」という設定を使ってバカな展開がテンコ盛りで楽しめます。

 

「デスクの裏にへばりついた、他人の食べたガムを食べる」とかしょうもない事で力が得られますが、あれは「いつもと違う事をすれば、苦しい状況を脱する事ができるかも」という事を表しているんですねw😅

 

 エヴリンは、夫のウェイモンド(キー・ホイ・クァン)と駆け落ちして故郷を離れ、娘のジョイ(ステファニー・スー)を設けるも、その選択に「これで良かったのか?」という後悔や疑問を感じていたり「夫から離婚届を突き付けられたストレス」や「父親から認めてもらえない苦悩」「税の申告のミスを指摘された事」などが、彼女が「注意欠陥多動性障害ADHD)」を患っているので、彼女にとってはそういった問題を解消するのがそれくらい大変なんだよという「難病もの」でもあるんだと。

 

 エヴリン役のミシェル・ヨーは、元はバレエを習いその後カンフーアクション映画に出ているので身体能力は保証済み、なのでアクション表現に説得力があります。

 

 でも「表彰されたトロフィーを使って〇〇〇に突っ込む」のはいくらなんでもバッチいのではないでしょうか?😵‍💫

 

 マルチバースのボスキャラが自分の娘なのは彼女にとってそれがいちばんの問題で、マルチバース内での親子喧嘩が壮絶だったりコミカルだったり(「落書き」と「石ころ」「お人形さん」になる箇所は吹き出しましたね😊)

 

 ランドリーの回転や、ベーグルは母と娘の関係が「輪廻」している事や、Z世代が抱えている空虚さのメタファー、冒頭の複数の監視カメラはマルチバースのメタファーと、メタ表現を追っていく楽しさやいろんな映画のパロディを見つける楽しさもありますね(「2001年宇宙の旅」や、ウォン・カーウァイ監督作品とか)。

 

 ラスト、彼女が「暴力による解決」では無く「優しさ(Be Kind)」で決着をつけるのは他民族国家アメリカや、広げると世界の現状に対する監督の回答というか決意表明にも見えます。

 

 でも、その「〇〇〇ボールを噛ませて〇〇〇ペンペン」は果たして優しさなんでしょうか?(;'∀')

 

 終盤のシリアスなシーンでも、こういうギャグを差し込んで来るテイスト、日本の漫画家でいうと「徳弘正也」先生っぽくて私は好きですね!😆

 

 全ての問題が解消し、マルチバースを渡り歩いて自分の様々な可能性を体験するけど

彼女は今の生活を、自分の意志で選択し直す。そして、翌日税の申告をやり直すところでEND。

 

 とうとうカンフー映画アカデミー賞を受賞!あの世のブルース・リー師父よ、見ていますか!