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「見た目重視社会」にさらされる我々 作:とあるアラ子 「ブスなんて言わないで第2巻」感想

 とあるアラ子先生の漫画「ブス言わ(勝手に命名)」第2巻の感想です。

 

 

 第1巻の感想はこちら👇

2ki3suke.com

 

<感想>

<第8話「自分のためのメイク」>

 梨花がプロデュースした雑誌「自分のためのメイク」が評価され、かつて男にモテる為の女性雑誌だったけど徐々に変わって来ている事を実感し、決意を新たにする梨花

 

 雑誌社での労働に慣れて来た知子は自分の低身長に悩んでいる小坂と話がはずむも、ここで前の会社に務めていた時の過去がフラッシュバックされて「あの人」が出て来るけど、ここは第14話「知子の過去」の伏線。

 

 梨花梨花で、彼女には「美人である事の呪い」があって、それが元で過去トラウマを抱える事件があった事が明かされる。

 

<第9話「誤解」>

 たまたま同じ電車に乗り合わせた梨花と知子。梨花が泣いているのを見た知子は彼女の行方を追うけど、どうやら梨花がストーカーされているのを感づいた知子が彼女を逃がす。

 

 ストーカーしていた奴は、一度食事しただけで一目惚れしたベンチャー企業の取締役。

 

 ここでもまた「美人である事の呪い」が発動なんかだんだんわかって来ました、美人の苦労といいますか、地獄が。

 

 「見つけられてしまう」んですね。

 

 梨花の悩みは、自分が見た目だけで好かれたり所有欲を掻き立てられたいと思われてしまい「ペットや美術品」と同じ扱いをされてしまう事。「トロフィーワイフ」の様なものでしょうか?

ja.wikipedia.org

 

 ストーカーから逃れて梨花の家に知子は行くけど、そこで梨花が知子と写った写真を

持っているのを見つける。

 

 そこで、知子は梨花から「イジメてなんてないそれは友達がやっていて、私はそれを止めようとした」と告白し、泣きながら謝罪する。

 

<第10話「雨の夜に」>

 梨花が、知子がイジメられている事を止めようとした事、そして知子に憧れていたという、知子からすれば衝撃の告白をされる。

 

 でもまだ梨花が「ブスなんていない」と言った事が知子は許せなくて、偽善、欺瞞だと思っている。

 

 自分が憧れていた知子が別人になっていたからそれを見て悲しくて、知子を自分の会社で雇用した。

 

 「傲慢だね」と知子知子も知子で「あの日殺そうとしてごめんね」と謝り、ふたりの仲は多少進展(?)する。

 

 ところ変わって、小坂のシーンマッチングアプリで知り合った彼女と食事をするけど、そこで小坂がシークレットブーツを履いている事を彼女に告白するけど、それを知った彼女はあっさりと小坂を「切る」という「ルックスはいいけど、低身長の男の悩み」が描かれる。

 

 知子の知り合い「幸段出版」の石田編集長のパート、20年以上前のバックナンバーを見返しながら彼女は「今の子はチョロい」と愚直る。

 

 彼女はどうも若い頃、女の欲望を紙面に打ち出す事で男にモテる為のファッション雑誌を徐々に変更した、要するに梨花の目指している目標の様な人だけど、何故か彼女の目は曇っている。

 

 それはおそらく、男の為のファッションをやめても、結局「欲望を煽っている」それ自体は変えられない事に憂鬱というか諦観を持っているのかも。

 

<第11話「誰か私を見つけて」>

 ミスコンの参加者「大河有紗」の視点で「多様性を意識したミスコン」の欺瞞が描かれて彼女が他の参加者を値踏みしながら、ミスコンのグランプリが、結局は見た目重視で選ばれて特別賞で、中身「だけ」で選ばれるというエクスキューズを彼女は知っている。

 

 審査員が男女4人で、構成比が男2人に女2人であるのを「ジェンダーバランスを意識している」と心の中で失笑する有紗

 

 でも、そんな値踏みをしながら実は彼女は自分の事が嫌いで、その理由は「普通だから」

 

 彼女にとってそれは「何も持っていないという事」で彼女は駅のホームで飛び降り自殺しようとするけどたまたま居合わせた(また!)知子に助けられる。

 

 そのミスコンの審査員になる依頼をうける梨花ここで梨花は、見た目重視を敵視していたけど、それを武器にして生きて行く人もいるので自分の多様性の射程について悩んでいて、この問題が簡単ではない事がわかる。

 

<第12話「多様性のミスコン」>

 有紗の自殺を止め、彼女の話を聞く知子彼女のバイト先に、すごくオシャレな先輩がいて彼女はSNSを利用し、そこでのフォロワー数が多い為、PR会社からなんと無料でバッグや時計を貰っている事が判明する。

 

 「それなら私も」と有紗SNSを始めるけど、先輩ほどにはフォロワー数は増えない

見た目がいいだけで、簡単にお金が貰える人を見てしまった彼女は働くのがバカバカしくなり「多様性のミスコン」でワンチャンを狙っている。

 

 ミシェル・ウェルベックの「闘争領域の拡大」でも出て来た「見た目重視社会における格差」がここでも描かれる。

 

 鬱小説家で有名な作者の処女作翻訳の妙もあって、非常に読みやすいけど読み手を選びます👇

 

 視点が変わって、今度はミスコンのプロデューサーがそもそも、なんでこういう形式のイベントを企画した理由が明かされて、彼には娘がいて娘が生まれた事で、初めて女性視点から世の中の美容に関する広告を見る事が出来、娘が成長した時に生きづらい社会になっているのを変える為だった。

 

 こうやって、いろんな人の視点で話が進行するので有紗視点だと欺瞞に写っていたけど問題は単純なものでは無く、本作の「標的」がおぼろげながらに浮かんで来ている。

 

 梨花は、知子から「ミスコンらしく見た目で審査すべき」と告げられ、悩ましい。

 

<第13話「梨花の出した答え」>

 「多様性のミスコン」が結局選ばれるのは可愛い女性なので、いっその事見た目100%のミスコンにした方がいいだろうと告げられ、悩む梨花

 

 一方、二次審査に落ちた有紗は、涙ながらに整形を検討する。

 

 でも、その選択肢は「明日、私は誰かのカノジョ」に出て来た整形依存症「アヤナ」と同じで、そこにはまた別の地獄が待っている。

 

 知子にミスコンの欺瞞を指摘された梨花は参加者全員の動画を徹夜で見直し授賞式に臨む。

 

 そして、彼女の下した決断だけど、ここはぜひ漫画を購入して確かめてもらいたい

たぶん、このミスコンに関わった人達にはそれぞれの「正義」があって、梨花の選択が

全員の納得を得られる訳では無い。

 

 ここで、SNSで肥大化した「承認欲求という名のドラッグ」が出て来て、やっぱりネットワーク社会は人類を救ってはくれず、新たな問題を発生させただけだったという事がこの作品でも描かれる。

 

 でも「白根梨花賞」を受賞した人がなんかプロレスラーばりのマイクパフォーマンスをしてくれた事が救いになり、ミスコンのエピソードは終了。

 

 でも、それで話は終わらず、梨花の会社の社員が隠れてお金の為に化粧品の宣伝を計画している事が明かされて、女性の間でも意見が分かれている事が描かれる。

 

<第14話「知子の過去」>

 この巻の最終話で、次巻への引きになっているエピソード。小坂に食事を誘われ、その後知子が「胸の奥が苦しくなる過去」を回想する。前に勤めていた会社で、第8話で少し出て来た「あの人」との関係が描かれますがここもやはり購入して実際に読んで確かめて欲しい。

 

 物凄い残酷な話で、読んでいていたたまれなくなりますがやっぱり「この次どうなんの?」という引きが上手く「くっ、第3巻が待ち遠しい」と作者の手のひらで転がされる楽しさを味合わせてくれます。

 

 「ルッキズム」に対するカウンターで始まったと思われる本作ですが、その射程はもしかすると「価値のスーパーフラット化」にまで伸びるのかも、おススメです😆