魚豊先生による疾走感あふれる漫画の感想です
<あらすじ>
15世紀前半の「P王国」では「C教」という宗教が信仰されていた
そこでは地動説は異端であり研究するだけで
拷問を受けたり最悪の場合死刑になった
そんな時代にある少年は地動説を研究していた
者に出会い地動説に魅せられてしまうのだが…
<感想>
たぶんヨーロッパの歴史に詳しい人からは
「地動説への過激な迫害なんかなかった、これは嘘だ!」と
お怒りの方がおられるでしょうが
どうもこの漫画世界の「地動説が迫害されている15世紀前半のP王国」
というのは物語を駆動させるための舞台装置であり
考証とかが主眼ではないんです
あくまでもフィクションなんですよ
だから「P王国」とか「C教」と国や宗教を明記
していないんですよね
これは特定の国や宗教を糾弾したり否定しないようにする為の措置でもあります
作者の魚豊(←鱧が好きなのでこのペンネームにした)氏へのインタビュー
なんかを読むと、そもそも前の漫画連載(「ひゃくえむ。」)が終了したのち
「次はちょっと人が死ぬスリリングな漫画をやってみよう」という
事で連載を始めたそうなので、ようするに「ネタ」なんですね
実際の歴史になかった拷問や迫害も恐怖という
スリルを演出する為の道具だということ
異端審問官のノヴァクが物語を通して
ずっと地動説を信じる者を追いますけど
あれは、恐怖が人の形をして追いかけてくることで
逃走劇になり、スリリングさが増すから
全ては「漫画を面白くする為」なんですよ
ノヴァクは決して狂信的な人間として描かれてなくて
あくまでも自分の職務に忠実な人で
だからこそ淡々と残虐な事が出来るし、そこが怖いところですよね
どの時代の、どの国にもこういう人はいるし
自分がそうならないとは言い切れないところもゾッとします😱
むしろ、地動説を信じるキャラ達の方が
己の信念を曲げずに、知識(地動説)という「チ。」に
駆り立てられて散っていくので、狂気すら感じます😅
「チ。」は地動説の「地」であったり、残虐表現の「血(チ。)」
や、知識の「チ。」と、重層的な
意味を持たせています
最終巻まで読み終わった方の中に
「あれ?コペルニクスが出て来て天動説から地動説へ移行するんじゃないの?」
と思われた方も多いのではないかと思いますが
最終巻でノヴァクが〇〇〇時点で逃走劇は
終わっているので、物語の疾走感は無くなりますから
後はエピローグになります
ノヴァクが〇〇時に「私はこの物語の悪役だったんだ。」って
思いっきりメタ発言しているのは流石に草が生えちゃいますが😅
この作者、あんまり絵は上手くないんですが
でも「読ませる」のが上手いんですよ
(「漫画が上手い」と評価されていますね)
マッドハウス制作でアニメ化も決定してるので
この機会に原作漫画を読んで
(8巻と短いので一気に読めます)
予習しておきましょう、おススメです\(^o^)/