にきさんすけのバラエティショップ

ASD自覚者(確定診断未実施)が、映画や漫画等の感想を書いてます

「ポストトゥルース」と「So What?(それがどうした?)」 作:宮台真司「私たちはどこから来て、どこへ行くのか」を読んで

 日本もアメリカもそうなんですけどなんかね、もう駄目らしいんですよ。

 

 宮台真司(去年、反知性主義者と思われる男に襲撃を受けたあの人)という社会学者が書いた「私たちはどこから来て、どこへ行くのか」を読んだのですが。

 

 日本国内の政治状況は、本当にひどくていちいち上げたらキリがない程なんですけど、明らかな違法行為や、理不尽な事が起こっても「So What?(それがどうした?)」みたいにそれが正されず、まかり通っていて。

 

 海の向こうのアメリカでもそれは同じでドナルド・トランプがしょうもないやつなのは明白なのに、いまだに彼は人気がある。

 

 トランプが大統領に選ばれたのは、最初彼が立候補した時にキワモノと見做されていたけど、ある一定の層(白人のキリスト教原理主義者)には頼りになる(様に見える)男として支持され、結果彼は大統領になってしまう。

 

 SNS上で、彼の支持者は自分にとって都合のいい情報を取捨選択し(チェリーピッキング)「気持ち良くなってしまい」脳内に自分達に都合のいい世界を構築し、FOXニュースの様なマスメディアもあるので、まともな人の意見や、自分たちの間違いを指摘されても認めないかミュートしたりブロックしたりして、もはやコミュニケーションが成立せず、アメリカの分断はほぼ確定してしまっている。

 

 メディアリテラシーが通用しない「ポストトゥルース」って事ですね。

 

 で、そもそも何でそうなったのかがこの本には書かれていて民主主義社会になり、人々がお金を稼いで裕福になり分厚い中間層が出来て、それが民主主義を支えるけど

グローバリゼーションによって中間層が無くなり、貧富の差が拡大して社会が空洞化し、人々が不安になり、その不安を埋めてくれる様な存在を求めると何かに依存するからいろんな社会問題が発生するんだと。

 

 「移民排斥」とか「日本スゲー」「ホスト狂い」「ソシャゲ・推し・アイドル」とか、不安を手当する為に何かにすがろうとする。

 

 分厚い中間層が生まれる事で、民主主義がまともに機能するのはせいぜい20年くらいで、日本が今の様な惨状になったのはまあバブルが崩壊し、それまでお金で誤魔化していた諸問題が一気に吹き上がり(オウム真理教事件や神戸連続児童殺傷事件等)21世紀に入ってポピュリズムが台頭し、それをどうする事も出来ず今に至るのは必然なのだそうな。

 

 日本でも「So What?」な出来事が相次いで、それを指摘されてもほぼ止められず、このままズルズルと真綿で首を絞める様にゆっくりと滅びるのはもはや確定していて、読んでいていやーな気分にはなるものの、納得せざるを得ないんですよねー😑

 

 この「So What?(それがどうした?)」ですが、それを反転させると「それがどうした?日本が滅びる事が確定しているとしても自分の置かれている状況で最善を尽くすしかないじゃないか」って受け止め方も出来て、田中芳樹の小説「銀河英雄伝説」にも出て来る台詞なんですけど、その中の登場人物が相手が帝国の皇帝で、彼は暴君でも無いとても優秀な存在なのに、民主主義陣営の自分達はかなりどうしようもない人が居た為に、傍目からは絶望的な状況でも降伏をせず、民主主義というイデオロギーを残す為に戦っていると記憶していますが、自分達の置かれた絶望的な状況をよく理解しながらも「それがどうした?」と言い放ち、民主主義を守る為に「最善を尽くす」

 

 

 クリント・イーストウッド監督の映画「硫黄島からの手紙」でも同様に、主人公の栗林中将は、自分達が敗けるのは確定していてそれを十分に分かっている(栗林中将と西中将は共に海外経験者で相手の文明を理解している)

 

 それでも栗林中将は部下たちに「最善を尽くせ」と命令し犬死にを禁じ、一日でも長く米軍を本土に上陸させない為に奮闘するのですが、やはり同じ事を主張している。

 

 

 映画「タイタニック」で出て来る、沈むのが確定したタイタニック号の船上で、バイオリンを弾いている人達がいるんですけど、ああいう境地なんでしょうね。

 

 それは、大げさなのかも知れないけど、人類全体を指していて実は、この世界が良くなっていく様な試みって全部失敗していてこれからの歴史って「同語反復(トートロジー)」なんですよね。

 

 2017年に発売されたPS4のゲームソフト、「ニーアオートマ」でも出て来る主題だけど、人類が滅んで代わりに人の形をした機械が地球上に存在していても、彼らもまた人類の営みを模倣し「争い、憎み、殺し合い」という「同語反復」をして何も変わらない。

 

 

 「たとえ状況が絶望的で、それを変える事が出来なくても自分に出来る事をするしかないじゃないか」という考えって要するに人間の尊厳について言及していると思うんですけど今の私にいったい何が出来るんだろうかって考えちゃいましたね😅

 

 今の私に出来る「最善」はブログを書くことですね😆