いわゆる「毒親」と「機能不全家族」を扱った、田房永子さんの自身の体験を元に描かれた漫画の感想です。
<感想>
<おかしい母親の行動に巻き込まれ、悪影響を受ける作者>
まずは、作者である田房さん(以下エイコさん)の生い立ちから始まって、田房さんは父と母とエイコさん本人の3人暮らし。実家に家族と遊びに行った時に、田房さんの母(以下田房母)が人にプレゼントをするのですが、相手は「いらない」と言っているのに田房母は押し付けようとして相手がやんわりと断ると、田房母の顔つきが「ギーン!!」と豹変し3秒で激怒します。
こんな感じ👇
田房母はとにかく身勝手で、エイコさんの気持ちをいっさい考慮にいれないで行動します。他人様の親を、こう言っては失礼なのはじゅうぶんに承知していますし、もし田房さん本人から削除要請があればもちろんこの記事は削除しますし、私は精神医療の専門家でもなんでもないのですが、おそらく田房母は「パーソナリティ障害」なんだと思います。
エイコさんを自分の一部と見做していて、エイコさんが相談したりこうしないで欲しい、こうして欲しいという願いを聞き入れないところとか、明らかにおかしいんですよね……
すぐに激昂するところなんかは「自分の怒りがコントロール出来ない」事を表していますし、この漫画は作者である田房永子さんの視点で田房母の奇行が描かれているから本人である田房母にはもしかしたら自分がおかしいのを客観視する事が出来ない為に、自覚出来て居ないんでしょう。
あと「誰のおかげで暮らせてると思ってんだ」とか子供に言うの、自分がどれだけヒドイ事を言っているのかの自覚がやっぱり無くて、経済的自立が出来ていない状態の子供を、言う事を利かせる為に脅すとか、親子関係を主従関係としかみていないんですよね。
学校でのエイコさんは、どうやら友達もいて人間関係には問題が無いようなので、彼女になんらかの精神疾患が無いのは救いですね(私は発達障害なので、人間関係が駄目でした)
この後エイコさんは家出をして男性と付き合うのですが、エイコさんは何故か自分の母親と似た様なタイプの男性を選んでしまいます。考えられる理由としては「親しい人間関係ってそんなものなんだ」と、エイコさんは母親との関係で間違って学習してしまったからと推測します。
母や彼氏との関係でエイコさんは自己肯定感が下がり、自分をねじ曲がった人形の様に思って彼女は精神的に消耗していく。それと、田房母がエイコさんに言う「安心させて~」という台詞ですが、私も母親に言われた事があってまともな親なら親が子供を安心させてあげる筈なのですが、立場が逆転しているんですよね(私の言っている事間違ってないですよね?)
「エネルギーヴァンパイア」という言葉がありまして、なんかスピリチュアル系の用語らしいのですが、相手とコミュニケーションを取ろうとしてもまったく成立せず、こちらが疲弊してしまう様な相手を指している用語で、田房母みたいな人ってそういう感じなんですよ(私の両親がそうでした)
<人を救うのは人>
読んでいてかなりキツイ内容ですが、エイコさんは「タカちゃん」というまともな男性に出会い、付き合うようになり結婚する。「人を救うのは人」なんですね。タカちゃんと結婚して妊娠し、子供が生まれるまでの間に母親に似ているところを治そうと決意、精神科に行き診断というか相談の結果
「あなたはとんでもない親からとんでもない育てられ方をしたんです」
と告げられ、ついにエイコさんの家族の「正体」が発覚する。またここでも「他者」に救われるエイコさん。
<世間の無理解というディスコミュニケーション>
今では毒親という言葉のおかげでこういった問題が可視化されてはいるものの、世間様というのは理解してくれないというか、理解が出来ない事があるんですよね。子供が自分の親を悪く言ったりすると
「育ててもらった親に何て事を言うんだ!」
「親がいるってかけがえのない事なんです、感謝すべきです」
「いつまで親から逃げてるつもり?」
等と、こちらが怒られてしまうんですよ。漫画「明日、私は誰かのカノジョ」でも、主人公の雪が毒親から逃げて来ているのを知らず、おそらく両親からまともな愛情を受けて育てられて来たであろう、パパ活相手の男が似た様なセリフを言って雪を無自覚に傷つけたりして。
ここでもまた「世間の無理解」というディスコミュニケーションがあって、田房さん相当生きづらかったろうなー、と共感しますね。
<父親もおかしい人>
父親も父親でおかしくて、田房母にDVする様な人だったけど、家が一戸建てになってからは何故かおとなしくなったり、エイコさんと母親が喧嘩しているのにその仲裁もせず、自分の部屋にこもりっきり。田房父も、娘のエイコさんを主従関係の様な扱いをしてエイコさんが母とのトラブルで相談の電話(父に電話をするのが初めて)を入れても
「お前が悪いんだから母さんに謝れ」
「親が死なないと親のありがたみはわかりますまい」
と、無下にする。
この父、おそらくネグレクトしているんだと思います。この漫画では、父親との関係があまり描かれていませんが、それは日本の家庭の親子関係って、母親と子供の関係する時間が長いからどうしても田房母VSエイコさんになっちゃうんでしょうね。
<自分の味方は自分>
精神科のカウンセリングで両親の正体は分かったけど、エイコさんは今までのトラウマに苦しめられてもだえ苦しむ。彼女はネットで同じ体験をした人の記事をみたり、親子問題関連の書籍をむさぼる様に読んだり、認知行動療法の様な事をして徐々に正常な精神になるんだけど、頭の中では世間の声や父親から言われた事が駆け巡り参りそうになるところで頭の中から「ビシーン」と、漫画的表現になりますが「ちっちゃいもうひとりの自分」が出て来てエイコさんを守りアドバイスしてくれる。
いままでさんざん他人にコントロールされて来たけど、ここでついにエイコさんは自己肯定感が戻って来た事もあり、自分を大切にし始めたのだと思います。
<終わりに>
大昔からあったと思うんですよ。歴史を参照すれば、それこそ親が子供を捨てたり虐待したり殺したりなんかする事例はゴロゴロありますからね。たぶん日本が衰退して来ているとはいえ、昔の野蛮な時代と比べてまだマシだからこういう問題はあまり気づかれなかったり、社会の空洞化の為に隣近所の家族が異常な状態にあるのがわからなくなったりしているのも関係していて、前からあった機能不全家族の問題が目立ち始めたんじゃないかと。
自分の親が毒親なのかを知るきっかけになる、もはや教科書と言ってもいいいとても優れたコミックエッセイ、おススメです\(^o^)/