ディズニープラス独占配信の「スター・ウォーズ」スピンオフ作品「マンダロリアン」の感想です。
監督:ジョン・ファヴロー
主演:ペドロ・パスカル
<あらすじ>
「スター・ウォーズ」エピソード6から5年後、銀河帝国崩壊後の世界で、賞金稼ぎマンダロリアンはある依頼を引き受けるが、そこで出会った存在を守る為に追われる身になる。
<感想>
まず予備知識として「スター・ウォーズ」を観ていないとあまり楽しめないかも知れません。まあ世界的に有名な映画なので、観ていない人の方が少ないからそこらへんは大丈夫なんでしょうね。
私のスター・ウォーズ視聴経歴(?)としては、1~9までの全てのエピソードを視聴しているので入り安かったです。多くの方が感じていると思いますが、エピソード7・8・9のいわゆる「新三部作」があの様な出来になってしまったので、もうスター・ウォーズもオワコンなのかなと見做されていたところに本作が登場し「新たなる希望」となったのはなんというか皮肉ですね。
時系列としては、エピソード6から5年後の世界の話で、帝国崩壊後の混乱で世の中は決して平和になった訳ではなく、まだ帝国の残党が復活を目論んでいるっぽい。戦後処理の話って事なんでしょうか?
このドラマ、監督のジョン・ファヴローによれば、日本の劇画「子連れ狼」を参考にして本作を製作したそうな。
確かに主人公のマンダロリアンは、ひょんな事からあのヨーダと同じ種族の”ザ・チャイルド”に過去の自分を投影し、その子を守ろうとした為に追われる身になり追っ手と戦っていますし、彼のまとっているアーマー(「ベスカー」という金属で作られている特別な物)には武器が搭載されていて、これは子連れ狼における乳母車と同じ役割を果たしている。
まあスター・ウォーズに出て来る「ジェダイの騎士」の元ネタが、「時代劇」の「時代」を取っているので原点回帰的ではあるんですよね。それと、部隊がおおむね辺境の無法地帯なので、そこら辺もやはりスター・ウォーズ本編にあった西部劇要素を取り入れていますね。
彼の所属する「マンダロア兵団」という集団は、惑星マンダロア出身の者でないとなれない事になっているけど、両親をドロイドに殺され孤児となっていたところを助けられたマンダロリアンは、彼らの集団に受け入れられているので、その集団に対する帰属意識が強い。独特の教義が有ったり、アーマーをみんな装着していてそれを刀に見たてている精神性なんかは侍の集団みたいで、ここも日本文化の影響が見られますね。チャプター4「楽園」なんて、モロに「7人の侍」ですからね。
それと、彼らの恰好どこかで見た記憶があると思っていたら、メインのスター・ウォーズ作品でファンに人気のあった「ボバ・フェット」と同じ格好なんですね。
おそらくこのスピンオフ作品が製作された経緯は、ボバ・フェットの人気が絡んでいて「彼が所属していた兵団の中の一人を主人公にして、スター・ウォーズの世界の中で活躍させたら面白いんじゃないか?」という発想があったのでしょう。まだシーズン1までしか観ていないので、本家のボバ・フェットがエピソード6でしょうもない最期を迎えたけど、もしかしてボバ生存しているんでしょうか?「実は無事だった」的な?
「スター・ウォーズ」って善悪がはっきりしてる世界だけど、今作では主人公が当初善と悪の狭間にいる様なキャラクターなんだけど、”ザ・チャイルド”を守るうちに彼の中に父性が芽生えていく。「無垢なる存在を守るうちに、自分の中の何かが目覚める」という要素を抽出すると、映画「グロリア」や「レオン」と共通していて物語としては鉄板なんですよね。
スター・ウォーズエピソード6で、最後に和解はしたけどルークとダース・ベイダーことアナキンの親子関係は上手くはいかなかったので、そのやり直しをしようという意図もあるのかなと思ったりしてます。
それと彼、劇中ほぼマスクをつけっぱなしなんですけど、衛生状態は大丈夫なんでしょうか?食事はどう取っているんだとか、蒸れるんじゃないかとか思うんですけど、まあフィクションなのでそこを突っ込むのは野暮なんでしょう。
最後のチャプター8「贖罪」で、マンダロリアンこと「ディン・ジャリン」がマスクを脱がざるを得ない状況になってここでやっと素顔をさらし、その中身が普通のおっさんなのはおそらくダース・ベイダーオマージュで、今まで仮面をつけていたけど、彼がひとりの人間である事を示し、今まで嫌っていたドロイドが自己犠牲的な行動をするのを目の当たりにしたディンが、過去のトラウマから解放された証としてジェットパックを身に着けて飛翔する展開は上手いですね。
気に入ったキャラクターとしては「有無は言わさん」が口ぐせのクイールとか、賞金稼ぎギルドのリーダー役のカール・ウェザース(御年75歳ですよこの人!)とか、見た目がショボいのに実は高性能のドロイドIG-11ですね。
Disney+に加入しているなら観なくてはいけない作品なのは間違い無いですね、有無は言わさん!