人気SFアクション映画「プレデター」の5作品目の解説です。視聴制限は「15+(15歳以上が視聴可)」なので、ゴア描写ありまくりですからその辺はご注意を。
監督:ダン・トラクテンバーグ
主演:アンバー・ミッドサンダー
<あらすじ>
1719年のグレートプレーンズ、コマンチ族の女戦士ナル(アンバー・ミッドサンダー)は自身の「試練の狩り」を探している最中に正体不明の怪物と遭遇する。
<解説>
いきなりこの作品からプレデターを味わうのは損だと思っていて、まず予習というか基礎知識として「プレデター」第1作と「プレデター2」は観ておいた方が凄く楽しめます。特に「2」を観ておくとこの作品の時代設定でピンときたり、ラストでニヤリとしたり出来るので是非事前に視聴しておく事をお勧めします。日本国内ではDisney+独占配信なのですが、検索するとDisney+内でプレデター関連作品はひと通り視聴出来るので予習はしやすいです。
この映画は徹底的に「狩りの映画」で、内容がシンプルだからこそアクション映画としてはパワーがあると思っています。物語としては主人公ナルの成長物語で、彼女がみんなから認められない事と、狩りの腕が無い事(男と同じになろうとしている)にコンプレックスを持っていたけど、自分の能力(賢さと器用さ)に気づき、自分が何者かを認識する事で成長し帰還するという内容だと思っています。
<キーワードは「反復」>
で、第1作と第2作を予習しておくと楽しめると言ったのは、その2作で描かれた事を意図的に反復しているからです。例えばナルがプレデターと遭遇し、川に流されるのは第1作の反復「血が出るなら殺せる」という台詞も反復、イタリア人に治療を施す際に「オレンジトツィア」という薬草を与える事で体温が低下した事で「見えなくなる」のも反復。この「反復」というのがキーワードになっていると思っています。
それはどういう事かといいますと「狩る者が狩られる者になる」というシーンが作中何度も反復され、それは最終決戦で狩られる側だったナルが最後「狩られる者が狩る者」に反転する事でカタルシスをもたらす為の演出なんでしょうね。
プレデターの初登場シーンで、まず蜘蛛がウサギに狩られてウサギが蛇に狩られ、その蛇をプレデターが狩って生皮を剥ぐ。犬がウサギを狩ろうとして横合いからプレデターに狩られたりとか、熊を仕留めそこなって危ういところにプレデターが熊を倒すシーンや、コマンチ族にとっては「プレデター(捕食者)」であるフランス人達(バッファローを「狩り」毛皮にする)とか、何回も反復されます。
ナルが作中何度も狩りに失敗するシーンが「反復」され、彼女は落ち込むも兄のタアベ(ダコタ・ビーバース)が実は彼女を認めていた事が後半分かり、彼女は覚醒し作中の経験を生かしてプレデターを最後には愛犬のサリーと協力してまたしても第1作の反復である「罠を使う」事で倒しプレデターの首を持ち帰り、殺された兄の代わりに族長に収まる。そしてその際イタリア人が持っていた拳銃を族長に渡し、銃には1715年の刻印がされているのはもちろん「プレデター2」の最後で、主人公がプレデターから渡された銃であるのが分かり、ファンには「やっぱり!」というニクイ終わり方をする。
<戦士同士の闘いの映画>
「狩りの映画」だと言ったのは、フランス人とのやりとり以外はコマンチ族とプレデターとの闘いは、あくまでも「狩り」で「殺戮」では無くて、それは怪我を負ったナルとプレデターが傷を治すシーンがまたしても「反復」される事からも分かって、傍目には残酷なんだけど、これは狩人・戦士の物語なんですよね。
<適切なキャスティングとポリティカル・コレクトネス>
第1作がオーストリア系アメリカ人のアーノルド・シュワルツェネッガーで、第2作がアフリカ系アメリカ人のダニー・グローヴァー、そして今作の主役のアンバー・ミッドサンダーですが、彼女は演じている役と同じネイティブ・アメリカンなんですよね。
そして女性である点も重要だと思っていて、いままでマッチョな主人公だったけどここで女性を主役にする事でプレデターとの強さの差が強調され、最後のカタルシスにつながるのでキャスティングは適切だと思っていて(「ベクデル・テスト」もパスしてますしね)さらにエンドロールで「ファニタ・パドポニーとコマンチ族に捧げる」とあるのですが、このファニタ・パドポニーという方はコマンチ族の教育者で詩人・アーティストでもあり、この映画を彼等彼女等に捧げて映画が終わるのもやはり配慮が行き届いているなと感じましたね。
「プレデター」も続編が作られ続ける事で劣化していく様に感じていましたが、これは久々に良作になりましたね、おススメです!