映画評論家・特殊翻訳家の柳下毅一郎さんが「映画考現学」の立場から主にマイナーな映画を掘り起こし、記録に留めようと試みた本を紹介します。
「皆殺し映画通信」は、Webマガジン「タグマ」で連載されています。
なお、単行本となった「皆殺し映画通信」は、kindleunlimitedなら無料で読める巻もあります。
最新刊の「皆殺し映画通信 死んで貰います」には、私もついうっかり観てしまった「大怪獣のあとしまつ」が収録されています。
何と言いますか、本当にご苦労様としか言いようが無いといいますか、観ていてしんどくはないのだろうかと思うんですよね柳下さん。誰に頼まれた訳でも無いのに普通の人なら「え、何それ?そんな映画あったの?」みたいな映画を観て映画評論家の能力を発揮してそういったどうしようもない映画をガンガン斬っていくから本のタイトルが「皆殺し映画通信」になっているんですけど。
第9巻で紹介されている「えんとつ町のプペル」とか、映像表現はともかく(アニメーションは優れているのでそこはちゃんと評価している)脚本と監督をした西野亮廣という男の内面がいかに空っぽであるかが語られていて、日本映画界にどうしようもない奴が巣食っているんだというのが分かってワロエナイです。柳下さんの文章がアッパーというかテンションが高かったり冷静であったりするので、この本で解説されている映画本編はとても観たくはないけど観た気分になるというお得感はあります。
で、そういった映画を観続けて斬っていくうちに柳下さんは「ご当地町おこし映画」というジャンルがある(ジャンル名は柳下さんが命名)のを発見する。
2023年5月1日放送のTBSラジオ「アフター6ジャンクション」内でこの本の内容の一部が紹介されていて、Spotifyで聴く事が出来ます。
大林宣彦監督の映画「尾道三部作」が契機となって制作されたのではないかという仮説で、町おこし映画に「祭り部門」というカテゴリーがあるみたいで、amazonプライム会員なら無料で視聴出来る「大綱引きの恋」と「はんだ山車まつり誕生秘話」という「地方の祭りの時代錯誤性を楽しむ」映画が紹介されています。
上記の作品は有名どころらしいですが、劇場では公開されない町おこし映画を観ていく内に柳下さんはこういった映画にある法則があるのを発見するのですが、そこで出演している女優が若い頃は仕事があったけど、年齢を重ねるに従い仕事が減っていくという日本映画の問題点も見えて来たりして、やはりここでもワロエナくなっていく。
メジャー系映画だけが映画じゃないのが分かる「映画考現学」が楽しめる良著、おススメです!